「週刊少年サンデー」を代表するだけでなく、空港の名前にまでなるほど、誰もが愛する国民的人気作品となった名探偵コナン。その連載開始は1994年のことだったとご存知でしたか？
序盤で描かれるフロッピーディスクやMOディスク、ブラウン管ディスプレイなど、この年代ならではのガジェット描写に郷愁を誘われます。当時の少年少女読者もすっかり大人になったのに、なぜコナン君は今も子ど……いやいや細かいこと（？）は気にしない。
コナンを変身させたアポトキシン4869を開発し、同じ子どもの姿で登場した灰原哀の初登場も90年代のことでした。いまや不本意ながらもすっかり少年探偵団の一員として馴染みまくっている彼女ですが、登場エピソードでは悪役ぶったお茶目な演技から泣き顔にいたるまで、意外なほど多くの表情を見せてくれています。コナンこと新一への思わせぶりな態度も、実はこの頃から続く彼女のミステリアスな顔のひとつ。
ヒロイン・蘭を交えた三角関係の歴史の長さにビックリしつつ、レジェンド作品の「あの頃」を振り返ってみませんか？

戦国時代にタイムスリップした中学生・かごめと人間と妖怪のハーフである犬夜叉が、四魂のかけらを集め宿敵奈落を倒す旅へ出る冒険活劇長編。犬夜叉一行と敵対しつつも不思議な縁で関わり続けたのが、妖刀天生牙を手にする犬夜叉の兄・殺生丸でした。
腹違いの弟である犬夜叉とは違い残忍な妖怪だったはずの彼ですが、気まぐれに助けた孤児・りんを手元に置いたことで情を移し変化していくことに。りんを失ったと思った瞬間には、これまで知らなかった悲哀やあわれみの情を我が身で思い知ったのです。クールな表情の下にしばしば見せてくれた「べ、別に人間のことなんてどうでもいいんだからね！」と言わんばかりの不器用な優しさが、多くのファンのハートをガッチリ掴みました。彼の成長が奈落との闘いに終止符を打つ要因の一つとなったのも、留美子先生エモすぎますよ～！
2020年放映の新作続編アニメでさらなる衝撃の事実が判明し、話題再燃の殺生丸さまの勇姿とツンデレイケメンムーブを……今こそおさらいしちゃいましょう！

90年代珠玉の名作の筆頭に上がるのは、2018年ドラマ化の大ヒットも記憶に新しい「今日俺」でしょう。
転校をきっかけにツッパリ化した三橋と伊藤がハチャメチャな高校生活を送るヤンキー学園物の名シーンとくれば、やはり二人が初めて真剣に対決したエピソードを挙げないわけにはいきません。互いに口に出せない事情を背負わされて、殴り合いへと追い込まれてしまった三橋と伊藤。もともとお人好しで正義感の強い伊藤チャンはともかくも、いくら騙されたとはいえ三橋がここまで義理堅い奴だったとは……！？ひねくれているようで深く信頼しあっていた二人の絆はもちろんですが、ズルイだけじゃなかった三橋の意外な一面も大きな見どころなのでした。
そして理子に頼まれ必死で駆けつけた今井もある意味輝いた！　出るたび三橋におちょくられヒドい目に遭うギャグ担当となって久しい今井ですが、彼らのピンチを見過ごさない男気だって最の高だと言わせて欲しいのです。
最終盤ではそんな今井をかつてない危機が襲ったうえに、極悪な宿敵・相良の帰還という最大の脅威に見舞われる三橋＆伊藤コンビ。絶体絶命の局面からの熱い大逆転を、今日からリプレイするっきゃない！

獣の槍を手にした少年「うしお」と、槍に封印されていた化け物「とら」コンビの冒険譚。巨匠・藤田和日郎の初期作にして今も人気が高い名作です。
「人を喰う」と豪語してはうしおにどつかれながらも人間社会に興味津々なとらのツンデレムーブに萌えまくり、他人のために命を捨てて闘ううしおの勇気に奮い立った熱い心のたぎりは、今なお胸に残っています。
どこをとってもクライマックスそのものの熱気に溢れた物語ですが、特にこれまで関わった人々や妖怪たちの助けを得ながら立ち向う「白面の者」との最終決戦は、涙腺崩壊間違いなしの神場面。うしおの身近な人々はもちろん、旅の途中で出会ったたくさんの仲間たち、そして倒さざるを得なかった敵との死線を越えた闘いの記憶が、うしおと読者の脳裏を走馬灯のように駆け巡ります。皆の思いを結集したとどめの一撃は今や目前。言葉では到底語り尽くせるはずのない、魂震える感動をもう一度味わってみませんか。

ナイスバディ美人で金に汚いゴーストスイーパー・美神令子と、その助手で圧倒的スケベな横島忠夫が暴れまくる冒険活劇物語！
下僕としてこき使われながらも果敢にセクハラを試みる横島と、彼を容赦なくしばき倒す美神のどつき漫才はお馴染みの展開ですが、終盤近い「アシュタロス編」ではそんな関係にわずかな変化が訪れます。美神の前世に関わる強大な敵・アシュタロスの送り込んできた三姉妹の一人ルシオラが横島に淡い想いを抱くようになり、初めて恋人が出来たとはしゃぐ横島。横島など歯牙にもかけていなかったはずの美神は、何故か複雑な感情に囚われるようになるのです。ああんもう素直になっちゃえよ美神さ～ん！
これまでなかなか進展しなかった美神と横島のじれったさにヤキモキしてきた読者的には前のめりになっちゃう場面ですが、この章のヒロインとなったルシオラと横島の物語もあまりに切なくて、情緒が迷子になりそう。前世からの絆がある美神さんと健気なルシオラ、いったい俺はどっちを選べばいいのか……！？そんなゼータクな煩悶を、横島と一緒に味わってみて！

人ならざる力――「ARMS」と呼ばれる、意思を持つ金属生命体を知らず右腕に宿していた高校生の高槻涼。平和な日常は突然終わりを告げ、幼馴染のカツミや同じ境遇の仲間たちと共に巨大陰謀組織エグリゴリとの闘いに巻き込まれていきます。
序盤から容赦なく襲いかかるハードな展開と作り込まれた世界観の情報量に圧倒されつつも、クセの強い登場人物たちにはドンドン愛着が湧いてしまうので、「どうか全員生き延びて！」と祈る気持ちでページ送りのタップが止まらないー！
超常的な能力を持つ刺客たちに追い詰められていくなかで、自身のARMS「ジャバウォック」の怒りや憎しみに何度も呑みこまれそうになる涼。恐ろしい破壊の力を持つジャバウォックを抑え込むことは、敵との闘いそのものよりも大きな試練だったのかもしれません。ストーリー中盤から判明していくARMS誕生の真実はあまりに残酷で怒りを感じるほどですが、だからこそ涼の出した答えを、是非とも最後まで見届けて欲しいのです。

幼くして父母を失いながらも、燃える情熱を胸に野球道を突き進んでいく茂野吾郎の生涯を描く物語。長編の中でも90年代に連載されたのは「三船東中学校編」でした。
不良の巣窟となっていた野球部に戻った吾郎が力づくで新風を吹き込んだシリーズ冒頭のエピソードは痛快でしたが、当の不良たちは吾郎への反感を抱きます。それでも野球を愛する元ボス山根の説得にほだされる形で、嫌々ながら部に残った不良の牟田。中学生にして鼻ピアスやリーゼントをキメているあたり、なかなかのグレっぷりなのですが……。
彼が最初は「青春ごっこ」とバカにしていたキツい練習後にガブ飲みする水道水の美味しさや、初めてのファインプレイに向けられた吾郎らチームメイトの言葉に心を揺り動かされるシーンは、大人世代の読者のセンチメンタルを直撃する隠れた名場面なのです。最近こういうのに弱いんだよなぁ……！

巨匠の洗練されたペンタッチと本格劇画調のレトロ感が融合した、みずみずしさに溢れる新感覚のSF時代劇。
物語は地球によく似たどこかの惑星の、江戸によく似た町で始まります。七人の異母きょうだいが集まり暮らすからくり長屋にやってきた、最後の一人・元火消しの七味。おおらかで個性的な男兄弟たちとはすぐ打ち解けたものの、キュートで男勝りな妹の菜種とだけはソリが合わずケンカしてばかりなのでした。根なし草の女たらしだったという、きょうだい達の父の正体とは。そして将軍の住まう城へとやってきた、怪しい異人たちの目的は？
実は父の正体について読者にはすぐに明かされますが、本来なら女の敵として許しがたいやらかしでもまァこの人ならば仕方ない、と思わせてしまう設定の妙に思わず脱帽。あだち作品お得意のもどかしいラブコメ展開はもちろんですが、何より「家族」の絆のさまざまな形が描かれた温かなファミリードラマとして、長く心に残る作品なのです。